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誰もが表現者、おもしろさが垣根を取り払う
世の中にあるさまざまなバリアを超えて、アートを通してすべての人を優しく包み込む(=インクルージョン)社会の実現を目指す取り組みがあります。長町では、福祉団体と地元町内会、店舗などが連携し、協働による人に優しいまちづくりの実現を目指しています。
※この記事は「協働まちづくりの実践(平成30年3月発行)」と同じ内容を掲載しています。
一般社団法人アート・インクルージョン
門脇 篤さん
菓子工房セレブレ
髙橋 康之さん
おしるこガールズのみなさん
障がいのあるなしにかかわらず「アートを通してすべての人を優しく包み込む社会を実現する」ことを目標にして、アトリエの運営やイベント開催などを行うプロジェクトがアート・インクルージョンです。2010年から地域のさまざまな団体と連携しながら活動しています。その一つが、長町商店街の菓子工房セレブレとの取り組みです。アート・インクルージョンには、障がいがある個性豊かなアーティストが在席しています。その作品をセレブレの店内に飾っているほか、商品カードなどもデザインしました。来店する方々からも、華やかで素敵だと好評を得ています。
セレブレオーナーシェフの髙橋さんは「このプロジェクトは、一過性ではないつながりを築けると感じました。一緒にこの長町商店街を盛り上げていきたいです」と話します。また「自分たちだけでは難しいことも、協働することによって、点ではなく、面として広がりを持つ未来を築いていけると感じています」と確かな手応えを得た様子。セレブレの季節感あふれるお菓子と、アーティストの作品が相乗作用を起こし、長町を鮮やかに彩っています。
また、2011年の震災後から月1回、今も続いている「おしるこカフェ」の活動があります。震災によって、活動場所である太白区長町も大きな被害を受けました。加えて、仙台市最大のあすと長町プレハブ仮設住宅が設置され、地域に被災者が集中。一般社団法人アート・インクルージョン理事の門脇さんは「悲しみに暮れる人々がまちにあふれる様子をみて、このまちのために、何かしなくてはと思った」と話します。
そうして始まったのが「おしるこカフェ」。特に何をするでもなく、ただおしるこを食べながらゆったりと語り合う場を設けたのです。門脇さんは「おしるこは、健康にもよく不思議と人の心まで温め、緊張をほぐす力があります」と話します。
おしるこカフェは大好評で、最近は復興公営住宅に住む「妙齢の」女性たちが中心となって活動する「おしるこガールズ」が運営に参画。料理の腕を生かし、おしるこやさまざまな味のお餅などを振る舞います。ここは、食べに来る人も運営する人も「また来月ね〜」と笑顔になるところ。ほっこり温かい気持ちになれる憩いの場となっています。2016年には、おしるこカフェに参加している88歳の女性がラップに乗せて自分の人生を世界に発信し、話題を呼びました。これも「おしるこの力」かもしれません。
いつも笑顔。おしるこガールズの皆さん。
活動の基本は、「利益より、おもしろいことを!」です。既存の考えに捕らわれていては、新たなおもしろさは誕生しません。アート・インクルージョンの活動に関わっている人は、障がい者も高齢者も誰もが表現者。みんな笑顔で、自分の持ち味を惜しみなく発揮し「おもしろい」ものを生み出しています。
アート・インクルージョンの考えるバリアフリーとは、単に障がいを取り払うという意味ではありません。表現の垣根を取り払い、おもしろいものを自由にアウトプットできる社会をつくっていくということなのです。震災にも負けず続いているこのプロジェクトは、これからも新しいおもしろさを追求し、街中に笑顔の花を咲かせていくでしょう。
(取材・文:学生ライター 平岡 凜)
一般社団法人アート・インクルージョン
〒980-0811 仙台市青葉区一番町3-8-14 スズキアバンティビル3F
Tel: 022-797-3672
Mail: office@art-in.org
菓子工房セレブレ
〒982-0011 仙台市太白区長町5-11-33 RamsesA長町中央1F
Tel: 022-346-7783