ホーム > STEP1 活動事例を知りたい > 障がい者就労支援複合機清掃サービス
たくさんの人が生きる社会に問い掛ける
障がいがあっても働きたい、働き続けたいという願いをかなえるためには、その人が就労能力や技術を習得するだけではなく、働く環境が整備されている必要があります。この双方の課題を解決するプロジェクトとして始まったのが複合機清掃サービスです。
※この記事は「協働まちづくりの実践(平成30年3月発行)」と同じ内容を掲載しています。
コニカミノルタジャパン株式会社東北支店
加藤 雅生さん
学校法人東北文化学園大学
土屋 滋さん
普段私たちが何気なく使っている複合機。オフィスの日常を陰ながら支えている「職人」がいることをご存知でしょうか。2012年6月、企業の複合機清掃を通して、障がい者の雇用の機会を広げる取り組み「複合機清掃サービス」がスタートしました。複合機メーカーのコニカミノルタジャパンと就労支援事業を行うアイエスエフネットライフが2012年度仙台市中間的就労支援事業に提案した事業です。
福祉施設に通う障がい者は、複合機清掃サービスに従事するため、福祉施設内での清掃練習、コニカミノルタジャパンでのビジネスマナー・コミュニケーション研修など、約3カ月間の訓練を受けます。次に実践的な清掃実習を経て、試験に合格した人が「認定作業員」として清掃に従事します。これまでの認定者は36人。2017年現在、約10人の認定作業員が36社の企業を定期的に訪問し、毎月約70台の複合機清掃を行っています。
コニカミノルタジャパンの加藤さんは「日本全国では何百万台という複合機があります。事業が軌道に乗れば、何百万台分の障がい者の方の仕事が増えるかもしれないと思いました」と語ります。
実際に企業を訪問する前に、本番を想定した清掃実習の場を提供しているのが東北文化学園大学です。大学には約30台の複合機があり、種類も設置場所もさまざま。大学での実習は多種多様な複合機の清掃を経験できるだけではなく、仕事の環境に慣れる練習にもなります。
真っすぐなまなざしとひたむきな姿勢で黙々と集中し、正確に作業をこなし、汗を流しながら丹念に複合機を磨き上げる姿を見て、東北文化学園大学の土屋学長は「学生が障がいのある方と触れ合う場ができますし、何より障がい者の方に合った仕事を見つける手助けになればと思いました」と話します。加藤さんも「事業の話を持ちかけても、リスクを心配して断られることが多かったなかで、大学側が快く受け入れてくれたことは大きな一歩でした」と振り返ります。
東北文化学園大学での清掃実習。[コニカミノルタジャパン提供]
コニカミノルタジャパンでは、これまで生まれた認定作業員のうち6人を自社で雇用しています。最初はあいさつもままならなかったという彼らは、新たに認定作業員を目指す障がい者への指導、訪問先の企業や大学との調整、マニュアル作りや広報など、複合機清掃事業のすべてを担うまでに成長しました。加藤さんは「ゆっくりと時間をかけることが大切です」と話します。清掃を一人ではなく、三人一組のチーム制で行っていることも工夫の一つ。お互いの競争意識を刺激し、協力し支え合う効果を生み出しています。
障がい者にとって社会との関わりの場が増え、周りから「ありがとう」と感謝される経験は、彼らの自信につながるとともに、企業側にとっても障がい者に対する理解促進のきっかけにもなります。加藤さんは「この事業スキームが、多くの企業に受け入れられたらいいと思っています」と語ります。取り組みに賛同し、協力する企業も少しずつ増えてきました。誰もがともに明るく生きる社会を目指し、取り組みはまだまだ発展を続けていきます。
(取材・文:学生ライター 伊藤 春夫)
コニカミノルタジャパン株式会社東北支店
〒980-0811 仙台市青葉区一番町1-2-25 仙台NSビル2F
Tel: 022-722-2265/Fax: 022-722-2224
学校法人東北文化学園大学
〒981-8550 仙台市青葉区国見6-45-1
Tel: 022-233-3330