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一度つまずいても、リスタートできるまち
厚生労働省の全国調査では、全国のホームレス数はここ数年10%ずつ減少していますが、仙台のホームレス数は、ほぼ横ばい。行政やNPOがさまざまな支援活動をしているにもかかわらず、減少に結びつかない背景や、現状に合った支援策を探ろうと、NPOと行政が協働して調査に取り組んでいます。
※この記事は「協働まちづくりの実践(平成30年3月発行)」と同じ内容を掲載しています。
特定非営利活動法人仙台夜まわりグループ
青木 康弘さん
新田 貴之さん
仙台市保護自立支援課
「愛する仙台のまちで、もうこんな亡くなり方をする人を出したくない」。2000年1月、たった3人で夜の街を歩き、当事者と思われる人に声を掛け、使い捨てカイロやみそ汁を配ることから始まった仙台夜まわりグループ。ホームレス状態の人を対象に炊き出し、相談などさまざまな支援活動をしています。
2001年当時の調査では、駅や公園などで生活する人は約130人。立ち上げメンバーの一人である仙台夜まわりグループの青木さんは「厳しい東北の冬に命を落とす人もいました。ごく身近な場所で起きている過酷な現実にショックを受けました」と話します。
生活困窮者の自立支援を所管する仙台市保護自立支援課は、10年以上前から「ホームレス自立支援連絡会議」を月1回開催。仙台夜まわりグループなどホームレス支援や困窮者支援に取り組むNPOや関係団体、行政が集い、情報交換をしています。
会議では、東日本大震災後、市内に見慣れない当事者が増えたことが共通の課題となっていました。さらに、24時間営業のネットカフェなどの利用、車中泊など、夜まわりでも見つけづらいケースが増え、仙台でホームレス状態にある人の数や状況がつかめなくなっていました。仙台夜まわりグループの新田さんは「雨風の心配はないかもしれませんが、不安定な生活には変わりありません。早いうちに支援につなぎたいと思いました」と振り返ります。
仙台夜まわりグループは2016年度仙台市市民協働事業提案制度で、ホームレスの現状を可視化し必要な支援につなげる事業を提案しました。仙台夜まわりグループと保護自立支援課は、これまで以上に意見交換を重ね、市内のホームレスの実態を把握するためのアンケートを作成。そして、そのアンケートは、仙台夜まわりグループが月1回実施している「自立支援セミナー」に集まった当事者に回答してもらいました。
2016年4月から2017年3月までのアンケートを分析した結果、震災後に復興関連の仕事を求めて全国各地から仙台に来た人がその後職を失い、ホームレス状態に陥っていること、土地勘がなく、支援団体や行政の適切な支援情報が伝わりづらいことが見えてきました。また、ホームレス状態に陥る経緯や状況の多様さも明らかになり、一人一人に合わせた個別支援が必要だと分かりました。そこで、仙台夜まわりグループでは、個人カルテを作成して支援していくことにしました。
仙台夜まわりグループも保護自立支援課も「今までも連携してきましたが、協働事業という形になることで、距離が縮まりました」と声をそろえます。事業を通して、それぞれの強みや弱みなどをお互いによく知ることができたとともに、課題に対し「ともに考え、取り組む」というスタンスが遠慮を取り払いました。仙台市の自立支援制度やNPOの取り組みをまとめて紹介するリーフレットを作成するアイデアも生まれ、2017年4月から行政窓口などで活用されています。
当事者の現状に合った支援策や今後の政策立案に生かそうと、両者は、今も調査と分析を重ねています。
(取材・文:市民活動サポートセンター 菅野 祥子)
ホームレス支援や生活困窮者に関する支援内容がすべて盛り込まれているリーフレット。
特定非営利活動法人仙台夜まわりグループ
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仙台市保護自立支援課
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