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STEP1 活動事例を知りたい

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一緒に活動する仲間一人ひとりを大切にしたい

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今回は、仙台市の「市民協働事業提案制度」を活用して市との協働事業を試行的に実施した、特定非営利活動法人STORIA代表理事の佐々木綾子さんをご紹介します。
この事業は大きな成果が得られたことから、その後、市の施策として本格的に実施されるに至りました。行政との連携は初めてだったというSTORIAは、なぜそのような実績を残し、行政を動かすことができたのでしょうか。プロジェクト当時のお話をインタビューする中で、佐々木さんご自身が活動の中で大切にしていることも伺うことができました。
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佐々木綾子さんのプロフィール

特定非営利活動法人STORIA代表理事。仙台市出身。大学卒業後、化粧品メーカーに就職し、20代で営業本部長を経験。その後退職し、2016年4月に特定非営利活動法人STORIAを設立。困難を抱えた子どもを対象に、地域に居場所(サードプレイス)をつくり様々な体験機会を提供している。さらにひとり親を対象に、相談支援や緊急時のサポート支援、就労支援まで担うなど、幅広く事業を展開している。モットーは「Respect&Fun」。趣味は読書、海を見ること。

何もかもが初めてだった行政との連携

―まず、2021年の1年間に、市と協働で取り組んだプロジェクトがどのようなものだったのか、教えていただけますか。

子育て家庭の孤立を防ぐために、仙台市と一緒に、支援の行き届きにくい家庭へのアウトリーチに取り組みました。このプロジェクトの内容は大きく2つありまして、1つはひとり親家庭からの相談をメールで受け付けて支援に繋げるもの、もう1つは、学校や家庭以外の子どもの居場所を地域につくるというものです。「子どもの居場所って何?」と思われるかもしれませんが、子どもが安心して過ごせて、人と関わりながら様々な機会や体験を得られる「居場所」が地域にあることで、子どもの意欲や自信、自己肯定感の醸成につながると私たちは考えています。これら2つの取り組みを一緒に行うことで、困難を抱えた家庭や子どもを包摂的に支援することを目指したプロジェクトでした。

―当時、このプロジェクトは、STORIAの事業の中でどのような位置づけのものだったのでしょうか。市と協働して取り組もうと思った理由なども教えていただけますか。
 
この事業は、私たちが法人を設立してから4年ほど経った時に、市に提案したプロジェクトでした。法人を設立して子どもの居場所づくりに取り組む中で、子育てに悩む親御さんから「支援に関する情報をどう探せばいいかわからない」「行政の相談窓口に行くことにハードルを感じる」などのリアルな声が寄せられ、様々な支援制度はあるのに、必要としている家族にその情報が届いていないという課題を感じていました。そして、同じような課題を抱えている家族が、私たちが活動を通して関わっている方以外にも多くいるのではないかと考えるようになりました。
どうすればより多くの家庭に対して、子育ての悩みとそれを支援する制度とをつなげられるのか。そう考えている時に、市が「市民協働事業提案制度」でこのテーマについての提案を募集していることを知り、応募しました。


事業の紹介
「SNSによる相談支援と地域の子どもの居場所づくりによる多様なアウトリーチ事業」
孤立する家庭を積極的に見つけ、早い段階で課題を解決するために必要な情報と支援を届けることを目的に、STORIA、仙台市子供家庭支援課(現・こども支援給付課)、宮城野区役所、地域の町内会や民生委員・児童委員、他団体との協働で取り組んだ事業。
メールを活用した相談対応、メーリングリストによる行政や地域からの支援情報の発信、子どもの居場所となるサードプレイスを地域に設けて食事や学びの機会を提供した。また、地域連携会議等を開催して関係者と課題を共有しながら、事業の効果検証も行った。
この事業は「市民協働事業提案制度(テーマ設定型)」を活用して実施された。


―佐々木さんはこの制度を活用する前に、市と業務などを通して連携した経験はありましたか。

それが、特になかったんです。当時は法人を設立してまだ年数も浅く、仕事での関わりはありませんでした。市との関係ですと、STORIAの活動内容を報告するために年に1回ほど宮城野区役所に伺って、職員の方に時間を作ってもらって説明していたくらいでした。

―そうだったんですか!もともと行政との連携の実績があって、行政とのコミュニケーションに慣れていたのかと思っていました。佐々木さんから見ると、行政はものの見方や考え方が違うと思います。初めて市との連携を目指した提案で、大変だったことも多かったのではないでしょうか。

初めてのやりとりばかりで応募する際は不安もありましたが、相談した時に窓口となっていただいた職員の方が親身に相談に乗ってくださったのでとても心強かったです。あとは熱意ですね。市が設定したテーマがまさに私たちの法人としてやるべきだとずっと思っていたことだったので、「任せてください!」という強い気持ちで提案しました。
実際に提案をして市の担当課の方と話をしてみると、同じ課題感を持っていたので、お互いの想いを共有できることに喜びを感じながら話し合いを重ねていきました。

―実際、目標を上回る成果を上げて、市の施策として本格的に実施されることになりましたが、これほどスピーディーに進んだ理由は何だったと思いますか。

お互いの課題認識や役割を共有しながら進めたからだと思います。市の課題をきちんと把握できたので、その上で私たちに何ができるかという部分はうまく提案できたと思います。また、提案を実現できればどのような成果が得られるかも考え、事業が計画通りに進まない場合の複数パターンのシミュレーションなども提案しました。このような提案の仕方は、私がかつて民間企業で働いていたビジネスマンとしての経験や、2017年に仙台市が主催していた社会起業家向けの集中プログラム「TOHOKU Social Innovation Accelerator」に参加した際の学びも生きていると思います。

共感した人が自分なりの役割を見つけて関わる

―1年間のプロジェクトの終了後、「ひとり親からのメール相談」は市の事業となり、全市的に展開されました。一方で「子どもの居場所づくり」はすぐには市の事業にはならず、しばらくSTORIAが自主事業として継続していたそうですね。そして、数年の時を経て、仙台市の事業として実施されるようになりました。そのときの気持ちを教えていただけますか。

「子どもの居場所づくり」については、プロジェクトを通してできた親や家庭とのつながりをなんとか継続したいと思い、クラウドファンディングによる寄付や、共感してくださる様々な方の協力を得ながら、自主事業として続けました。
そうして地道に続けていたところ、令和6年度にこの事業も仙台市の施策となりました。この連絡を受けた時は、自主事業で続けてきた私たちの本質的な活動と想いが伝わった気がして、より多くの子どもたちに支援が届いていく未来を思って、涙が出るほど嬉しかったです。

―緻密に事業方針を練り上げていくお話や、資金調達、協力者の巻き込み方まで、キャリアを生かした佐々木さんの凄さを感じます。

いえ、実際は、自分は抜けていることが多いんです(笑)。忘れっぽいところも結構ありまして、STORIAのスタッフは優秀なこともあって、いろいろな場面で助けてもらっています。

―佐々木さんは敏腕な代表者というイメージを私は持っていたので、なんだか意外でした!

団体スタッフの他にも、全国にいる約40名のプロボノの方々にも一緒に事業に取り組んでもらっていて、いろいろな側面で助けてもらっています。プロボノの方々との関わり方においても、自分の抜けているところや不得意な部分は隠さずに、得意な方の力を借りて事業を進めています。大変ありがたい存在です。

―先ほどのクラウドファンディングのお話もそうですが、外部の方々との協力関係がSTORIAの事業を進める上での強みになっていると感じます。佐々木さん自身としては自分に足りないと思っている部分でも、それを隠さないことで、STORIAの活動に共感する人たちが、きっと自分なりの役割を見つけて様々な形で一緒に関わりたいと思うんでしょうね。

その人らしくあってほしいという願い

―佐々木さんがなぜ、家庭や子どもの支援に取り組むようになったのかについてお伺いしたいのですが、まず、民間企業からNPOの分野へ進んだきっかけを教えていただけますか。

大学を卒業した後は化粧品メーカーに就職して働き始めました。当時、若手をマネージャーに起用しようという会社の方針もあり、ありがたいことに20代で営業本部長を任されました。しかし、営業として数字を追い続ける働き方の中で、一緒に働く仲間たちの中には「その人らしさ」が徐々に失われていく仲間もいて、そのような状況に管理職として直面しながら、組織としての働き方に疑問を抱くようになっていました。
そんな時、東日本大震災が発生したんです。私自身も自宅が被災して、避難所での生活を送り、生死の境をさまよう人たちを日常的に目の当たりにする日々を送る中で、自分が生かされた意味を考えていました。そして、何ができるかはわからなかったのですが、ひとり親やその子どもたちと共に生きていく、そんな仕事をしたいと思うようになりました。

―そうだったんですね。佐々木さんはなぜ、未経験の福祉分野で、しかも家庭や子どもの支援に関わりたいと思ったんですか。

根底には私自身の幼少期の経験があります。小さな頃から、大人に「こうしなさい」と言われる度に、自分の願いとは別なところでコントロールされているような気持ちになることが多くて、違和感を抱いていたのを覚えています。その経験が、子どもたちに「自分らしく」「ありのまま」でいてほしいという想いに繋がっているのだと思います。
あとは、私自分がヤングケアラーだったこともあり、親や子どもという個人を含んだ家庭という環境がよりよくなってほしいという願いがあります。この2つの経験は、STORIAを設立し、私が活動を続けている上で、大切な原体験になっていると思います。

―大変なご苦労もあったと思いますが、過去の様々な経験が今の佐々木さんをつくり上げているんですね。NPO法人の代表者になった今、事業に取り組む上で佐々木さんが大切にしていることはありますか。

支援者を大切にすることはもちろんのこと、法人のスタッフや関わってくださる方も同じくらい大切にしたいと考えています。STORIAに集まってくださる方々には、一人ひとりが大切にしたい願いがあります。各個人の願いが生かされる環境を少しずつでも作っていくことで、一緒に活動する仲間の幸福度が増していくはずです。
NPO法人の運営は、営利企業のように利益は追及しない代わりに、社会的な意義や社会によりよい影響を生み出すことを追い求め、代表者の熱意が色濃く運営に反映される特徴があると思います。だからこそ、関わってくださる個人が尊重されているかということは気に掛けています。一緒に働くスタッフやプロボノさん、ボランティアさんお一人おひとりを尊重し、その方々が本来持っている力を発揮できる場所をいかにつくるか、それが代表である私の役割だと思っています。

―働く仲間を大切にされているからこそ、佐々木さんが困ったときに仲間が助けてくれているんですね。佐々木さんのスタッフへの接し方が、スタッフの支援者への接し方にも影響していそうな印象を受けます。

それはあると思います。自分が尊重されていると思うことで他の人のことも尊重できます。そういう意味では、スタッフの先にいる支援者の姿も思い浮かべながらスタッフに接しています。
そういえば、私と同じように企業やNPOで組織の代表者をしている仲間と話していた時に「代表者にも愛情が必要だね」という話になったことがあって、その時に、STORIAの組織の仲間から私自身が愛情をもらっていることをより強く意識しました。愛情っていい言葉だなと思っていて、STORIAの活動がたくさんの愛情をいただいて成り立っているように、私たちも事業を通して関わる全ての方々に愛情を届けていく、「愛情の循環」が続く社会を目指していきたいなと思っています。

―最後に、協働で取り組みを進めたいと思っている方にメッセージをお願いします。

どんなに強い想いがあっても、自分一人でできることには限界があります。支えてくれる仲間がいるからこそ、できることが増え、結果的に多くの支援につながります。私たちの取り組みを聞いて、皆さんが「私はこうありたい」「自分たちの団体はこうなっていきたい」と考えるきっかけになってくれれば嬉しいです。

(取材 2024年8月 文 仙台市市民協働推進課)

おわりに

NPO法人の代表者として強い想いを持ちながらも、自分の不得意な部分は仲間を頼り、人を大切にしながら事業に取り組む佐々木さんの魅力をたくさん伺うことができました。
市民協働事業提案制度では、市と協働で取り組む提案を募集しています。ぜひ地域の取り組みでご活用ください。


「市民協働事業提案制度」とは、地域の課題解決やまちの魅力向上を目指して、市民の皆さんからの提案をもとに、仙台市と協働で取り組む制度です。採択した事業の経費は、提案団体と仙台市で双方で負担することとしており、市の負担額は全体事業費の10分の9以内(上限300万円)としています。
市民協働事業提案制度に興味を持たれた方はこちら!
https://www.city.sendai.jp/kyodosuishin/kurashi/manabu/npo/shimin/jisshijigyo/sedo/index.html



CONTACT

特定非営利活動法人STORIA
〒980-0821 宮城県仙台市青葉区春日町9-15-505

仙台市こども若者局こども支援給付課

更新日:2024.11.19