当サイトでは協働によるまちづくりのための支援制度・相談窓口や、活動事例をご紹介します。

メニュー
  • 文字の大きさを変更
  • 小
  • 中
  • 大

STEP1 活動事例を知りたい

ホーム > STEP1 活動事例を知りたい > 商店街をより良くしたい!それぞれの強みと想いを結集させたデータ調査

商店街をより良くしたい!それぞれの強みと想いを結集させたデータ調査

  • まちづくり
  • その他
  • 青葉区
仙台駅の西側には歴史あるアーケード商店街が広がっています。その中心部商店街で、さらなる賑わい創出や魅力向上を目的に、令和4年度にBLEビーコンセンサー(※1)(以下、センサー)を用いた人流データ調査の取り組みが実施されました。
歴史ある中心部商店街でどのようにDX(※2)の取り組みが始まったのか、取り組みの裏側ではいったいどんなことが起きていたのか、仙台市中心部商店街活性化協議会の事務局運営に携わる、一般社団法人まちくる仙台の企画広報部長である栗田直樹さんにお話を伺いました。
RELATION MAP
MEMBER

まちくる仙台
東北大学(ゼロワ株式会社)
仙台市

栗田直樹さんのプロフィール


一般社団法人まちくる仙台企画広報部長。仙台市出身。まちくる仙台の前身である「東北ろっけんパーク」に2013年に参画。東日本大震災後に設置された、起業に向けた準備をバックアップする「TRY6チャレンジShop&Cafe」のマネージャーとして、飲食や物販などの店舗を経営したい人への支援を7年ほど経験。その後も商店街ぐるみのイベントの企画運営、コロナ禍における飲食店や旅行業界を支援するクラウドファンディングの運営に携わり、継続的に商店街の活性化事業に従事。モットーは「誰かの役に立っている」。趣味はカメラ、散歩。


(※1)BLEビーコンセンサー…BLEとはBluetooth Low Energyの略で、Bluetoothに比べて低電力消費・低コストに特化した、位置特定技術を利用したセンサーのこと。
(※2)DX…デジタルトランスフォーメーションの略。単なる新しいデジタル技術(ICT)の導入ではなく、制度や政策、組織の在り方等を新技術に合わせて変革し、地域における様々な課題の解決や社会経済活動の発展を促していくこと。

別々の取り組みが繋がることにより踏み出せた一歩

―商店街で人流データの活用に取り組みたいと思った、当時の栗田さんが抱えていた問題意識をお伺いできますか。

商店街の活性化事業に携わり、商店街の賑わい創出や魅力向上を考える中で、前職のチャレンジショップの経験もあり、商店街全体の現状を把握するための手段の一つとして、人の流れを数値化できる術はないかと考えていました。ただ、私たち単独でデータ収集に取り組むには、何をどうすればいいのか、はじめの一歩の踏み出し方すらわからずに時間だけが経っていました。

―どのようなきっかけで東北大学や仙台市と連携した調査を行うことになったのでしょうか。

令和3年度に仙台市の「仙台市デジタル・トランスフォーメーション(DX)計画」の一環として、データをまちづくりにどう活かすかについて議論することになり、まちくる仙台が関わることになりました。

一方で、同じ頃、コロナ禍における感染防止と経済活動の両立を目指して、東北大学の研究チームのデータ駆動科学・AI教育研究センターが、独自で開発した人流量を計測できるBLEビーコンセンサーを飲食店の店舗に設置して人流データ調査を行っていました。研究チームの代表である酒井正夫准教授から仙台市に調査対象地域の拡大について相談があり、候補として国分町からほど近い場所に位置する一番町四丁目商店街があがり、調査における商店街側の調整を支援する役割としてまちくる仙台が関わったのです。

こうして令和3年度に1つの商店街で行った調査が、令和4年度にまちくる仙台と東北大学、仙台市とが行った、6つの商店街に範囲を広げた人流データ調査へと繋がっていきました。


「中心部商店街でのデータ活用環境の整備と活用方法の検討」

令和4年度にまちくる仙台が中心となり、ゼロワ株式会社、東北大学、仙台市との協働で実施した事業。BLEビーコンセンサーを用いて商店街の通行量を長期間に渡って測定する他、AIカメラ付きサイネージ(電子掲示板)等による人流データ把握と広告訴求効果を検証し、商店街関係者等とのデータ利活用方法を検討するというもの。
この事業は「仙台市市民協働事業提案制度(テーマ設定型)」を活用して実施された。


―令和4年度の調査の関係者はそれぞれどのような役割を担ったのでしょうか。

まず、まちくる仙台が、全体企画の立案や各商店街との調整、各店舗へのセンサー設置の依頼を行いました。ゼロワ株式会社は酒井先生が技術顧問を務める東北大学発のITベンチャー企業で、調査ではゼロワ株式会社にセンサーの開発とデータ収集を、東北大学にデータ解析を依頼しました。仙台市には各種調整やアドバイスを依頼し、センサー設置の協力場所の候補を一緒に探してもらいました。

関係者の強みやプロジェクトの目的をすり合わせる大切さ

―調査を進める現場で苦労したことはありましたか。

センサー設置箇所数は少し多すぎたかと反省しています。約50箇所のセンサーを設置することで商店街エリア全体の人流をまとめたかったのですが、データが膨大すぎて、コンピューターの処理能力や記憶能力が想定より多く必要なことが後で分かり、協力いただいたセンサーの設置店舗の方々へ成果報告が遅れてしまったことは申し訳なかったと感じています。さらに、センサーを設置してみると想定していた以上に機器トラブルが発生してしまい、設置現場へ足を運んでセンサーの確認や再起動の作業をしに行くこともありました。設置箇所が多かっただけに、酒井先生も私もへとへとになりながら1日中歩き回ることもありましたが、ゼロワ株式会社が常に現場や遠隔でセンサーの状況をチェックしてくれていたことでトラブル対応を迅速に行うことができました。

―なぜ皆さんがそれだけ根気強くこの調査に向き合えたのでしょうか。

関係者それぞれがこの調査を自分事として捉えていたからだと思います。商店街を活性化したいまちくる仙台、複数の商店街にまたがる広いエリアを対象とした研究をしたい東北大学、DXをまちづくりに活かしたい仙台市、それぞれが目指すものや達成したいことに繋がる調査でしたし、それぞれの強みを発揮できる調査だったと思います。そういった共通する目的を共有することは常に大切にしましたし、計画通りに進まない時は無理はせずにできる方法を模索していき、事業の方向性を皆で理解していきました。一緒に取り組んでくださった皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです。

―大変なときに栗田さんにとって誰が一番の相談相手でしたか。

まちくる仙台のスタッフに助けられたことはもちろん、仙台市の担当者にも手一杯になっていた事業開始の時期や中間・最終報告の書類作成時期にサポートしてもらったことで、前向きに進めることができたのを覚えています。

その中でも、当時の1番の相談相手は東北大学の酒井先生でした。データの調査・分析等というものは私たちの分野外のことでしたので、専門用語の意味や機械的な問題の解決方法、運営体制の構築、事業終了後の展開なども幅広く相談していました。その度に、毎回の私の質問に対して、こうすれば解決できる、解決出来るかもしれないと、前向きな手段を提案してもらえるので大変助かりました。そうして何度もコミュニケーションを取るうちに、自分の分野外のことを遠慮なく聞くことのできる関係性が築けていけました。

連携の輪が連鎖的に広がっていくおもしろさ

―まちくる仙台は複数の商店街の事務局という立場ですが、調査に対して街の方々の関心は高かったのでしょうか。

商売に大きく影響する商店街への人の流れや数といったものは、これまで店舗それぞれが感覚的に捉えていた部分が大きかったと思います。また、人の流れは個店でコントロールできない部分もあります。そういったこともあり、商店街関係者で調査に反対する方はいませんでしたが、「長年、肌感覚で捉えているものを数値にしただけで何が変わるのだろうか」といった声もあったと思います。

しかし、それまで得ることができなかった定量的なデータを協議会のDX分科会で報告すると、商店街の現状をデータで視覚的に把握できたことで、商店街で行うイベントの効果検証としての活用の可能性や、商店街の回遊性を高める訴求方法の在り方など、データの活用方法について活発な意見が上がりました。その中で、仙台七夕まつりの混雑状況をweb上で確認できる関係者用の可視化システムを構築したことで、データ活用の汎用性が広がり、センサーの設置期間を当初の予定より延長することになりました。

―令和4年度の調査終了後はどのように取り組みが発展していますか。

令和4年度の調査の成果を足がかりに、令和5年度には国の補助を得て、仙台市の他部署や企業との事業にも広がっていきました。

仙台市経済局とは、性別や年代や居住地などといった来街者の属性情報や位置情報データを活用した分析ツールで把握することで、街の回遊性を向上させる施策を検討し、新規の来街者を呼び込む施策などを商店街関係者と勉強会を開くことに繋がっています。
仙台市まちづくり政策局の取り組みである「防災環境“周遊”都市・仙台モデル推進事業」は、安全・安心と賑わいを両立した都市を目指す様々なデータを連携するプラットフォームをつくるというもので、まちくる仙台はスマートフォンアプリ「仙台まちいこ」(仙台商工会議所と株式会社K-SOCEKTと共同運用)の運営事務局として参画し、アプリの利用者向けにプッシュ通知による情報発信を行っています。(※3)
さらに、民間5社と連携した取り組みである「仙台まちテックプロジェクト」では、商店街の人流データと売上データの相関関係を分析することで、プロモーション方法や店頭の看板に掲示する内容を改良し、店舗の集客増・売上増となる効果的な打ち手を探っています。得られたデータをもとにさらにPDCAで回していき、より店舗の売上増へ繋がるという連鎖的な「データのサプライチェーン」を目指しており、このデータ活用が新しいDXサービスへと発展していくことを期待しています。

このような取り組みは、令和4年度の調査がまだ終わらないうちから、私たちの取り組みの成果を見て興味を持ってくれた仙台市や事業者から声をかけてもらったことがきっかけで検討が始まり、様々な意見交換の場やアイデアが出てきたことは大変嬉しかったです。私自身も「そういう分野に需要があったのか」と新たな発見があり、連携が連携を生むこと、他サービスと有機的に繋がっていくことを実感できました。

(※3)この取り組みは仙台市が運営する「仙台データダッシュボード」とも連携し、令和6年3月にデータのオープン化を実現した。
仙台データダッシュボード:https://data.city.sendai.jp/

―最後に、これから他の団体と連携してみたい方や、連携して取り組む中で悩んでいる方へ、伝えたいことやアドバイスがあれば教えてください。

市民協働事業と聞いて、複数の関係者で一つのことに取り組むのは大変な部分も多いのでは…と考えてしまいがちですが、自分のやりたい事はあるけれども自団体だけでは難しいとなった時に、他団体と連携することで新しい知見が加わり、解決へと進むことは多々あると思います。
制度を活用するにあたって、計画を立てて実行したり、関係者とコミュニケーションを取ったりと大変さはありますが、活動していくことで少しずつ結果が見えてきて充実感がありました。事前相談や事業費補助など現実的なサポートも助かったので、市民協働事業提案制度に興味をもった方は気軽に相談してみてほしいです。

(取材 2024年1月 文 仙台市市民協働推進課)

おわりに

終始笑顔で当時を振り返る栗田さんの姿がとても印象的でした。事業に取り組む中で大変なことも多かったと思いますが、それ以上に、自分たちだけでは難しいと感じていた取り組みを、制度を活用して実現できた達成感があったのではないかと感じました。
市民協働事業提案制度では、このように市との協働で取り組む提案を募集しています。ぜひ地域の取り組みでご活用ください。


「市民協働事業提案制度」とは、地域の身近な課題について、市民の皆さんからの提案をもとに、仙台市と協働で解決していく制度です。採択した事業の経費は、提案団体と仙台市で双方で負担することとしており、市の負担額は全体事業費の10分の9以内(上限300万円)としています。
市民協働事業提案制度に興味を持たれた方はこちら!
https://www.city.sendai.jp/kyodosuishin/kurashi/manabu/npo/shimin/jisshijigyo/sedo/index.html



CONTACT

一般社団法人まちくる仙台
〒980-0811 宮城県仙台市青葉区一番町3丁目2−1 藤崎 事務館III 2階
TEL:022-395-6101

仙台市まちづくり政策局まちのデジタル推進課

更新日:2024.06.28