当サイトでは協働によるまちづくりのための支援制度・相談窓口や、活動事例をご紹介します。

仙台市中心部からバスで15分。大通りから細い路地に入ると昔ながらの2階建ての家が見えてきます。ライオンノッカー付の玄関扉を開けると、木目が美しい床や壁が現れ、最初の部屋は蔵書で埋まる大きな書棚付きの洋室、さらに進むと床の間のある和室があります。そして、開け放たれた縁側の先には菜園。昭和の時代を感じさせる落ち着いた空間が広がっています。2017年4月に青葉区中山5丁目にオープンした「中山モダンハウス」。築40年の空き家を活用して、2階の2部屋をシェアハウスに、1階は時間貸しの和室と洋室、庭はレンタル菜園として貸し出しをしています。賃貸事業の他にも1階にある私設図書館兼イベントスペースでは、ボードゲームの会や料理の会など多世代が集まる週末イベントが定期的に開催され、交流の場となっています。

中山地区は、1960年代頃から造成が始まった郊外の静かな住宅地。団地の高齢化に伴う空き家の増加という地域課題を抱えており、この状況を改善するため、地域に若い世代を呼び込もうと、商店街と町内会の有志で中山街づくりセンターを設立。同センター理事の千葉さんは「厄介なものも、人の手が入ることで資産になる」と話します。中山モダンハウスを運営するのは、仙台市が開講するまちづくり人材育成講座で出会った岩間さん、根本さん、沼田さん。3人と空き家をつなげたのが千葉さんです。丁寧に使われた昭和の家は、平成育ちの彼らにはモダンで斬新な異空間に映りました。若者の多くは、便利な街中に住み、部屋には寝に帰るだけ。必要なのは最小限のスペースのみ。そんな生活スタイルに疑問をもった根本さんたちは「一軒家をみんなでシェアすれば、広い空間を自由に使え、マンション暮らしでは得られない豊かな時間を過ごせるかもしれない」と週末一軒家プロジェクトをスタートさせました。

岩間さんは初めて中山を訪れた時のことを「地域の子どもたちが知らない大人にもあいさつすることに大変驚きました」と振り返ります。セキュリティ万全のマンションでは見知らぬ人には声を掛けないというのが日常ですが、ここでは逆に、住民が声を掛け合うことで防犯の効果を高めていると感じたそうです。モダンハウス運営のモットーは「楽しく、無理なく」。3人それぞれの「場づくり」や「経営」をしたいという欲望も満たしつつ、週末、彼らは中山に通います。千葉さんは「ヨソモノ」の若者たちに「おもしろいことをもっとやれ」と熱いエールを送り、地域に眠る資産を生かすきっかけとなった彼らの行動に期待を寄せています。中山では、多世代交流センターの建設が2018年5月の完成に向けて進んでいます。（※取材当時）これに合わせ、モダンハウスをモデルケースに、センター活用のためのワークショップも開催。地域住民が講師となる趣味の教室、商店主が専門分野を教えるワークショップなど、次々にアイデアが湧いてきます。これらを実現するため、「一緒にやりたい人この指とまれ！」と活力ある地域住民が主体となり、中山の魅力あふれるまちづくりが進められていきます。

（取材・文：市民ライター 小野 恵子）